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そんな死にそうな話をしながら仕事中、タケルは能天気に口ばかり開いていた。

ひたすら話すタケルに、俺は面倒くさくなり、返事から相槌に変わる。


その間、もう一つ厄介なのは、俺の携帯がひたすらなり続けている事だった。


手を止めては携帯に、そしてまた手を止めては携帯にと、次第に面倒くさくなっていた。

まぁ、自業自得だろうけど。

掛かってくるのは店の客ばっか。


その電話殆どに謝るのも精神的に疲れる。

と言うのも、流星がどんな風に言ってあるのか聞いていなかったため、話の内容が掴めなかった。


″大切なジムって何だったの?″


言われて、意味が分かんなかった。


ジム?事務?

流星の奴、何言ってんだか知んねーけど、話の内容からすると、″ジム″らしい。

体を鍛える方のジム。


あいつ、マジでふざけてんのかよ。


「つーか、翔さん!」


少し離れた所からタケルの声が飛んでくる。

その声の方に、視線を送ると、


「翔さん、今日は電話しに来たんすか?」


呆れながらに大声を出すタケルに、思わず苦笑いになる。

そう言われるのも無理はない。

なり続ける携帯に、無視するのも出来ず、ひたすら耳に携帯を当てているのだから。
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