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「悪りぃけど、今日4時に帰るわ」
「えーっ、4時?俺、7時まで仕事なんすけど。翔さん抜けるんなら8時までかも知んねーっす」
タケルはゲンナリとした表情で、声を出す。
「帰るっつっても1時間早く帰るだけだろーが」
「てか翔さんの分の仕事も俺がやるんすか?」
「まぁ…そういう事になるな」
「はぁ!?もう体力ねーっす」
「まだ10時過ぎだろーが。もぅ、給料までお前の飯くらいみてやっから」
「ま、まじっすか!?」
「あぁ」
「だから俺の分、よろしくな。ちょい親方んとこ行ってくるわ」
「任せて下さいっす」
単純な奴。
面倒くさいから最後には折れてる自分にため息が出る。
まぁ、いつも5時か4時半に帰ってるから仕方ないって思うのも当たり前だけども。
だから、タケルには面倒くさいと思いつつも、ありがたく思う。
その分、飯くらいは…
足を進めていく俺の足が不意に止まる。
ポケットから伝わる振動音に、思わずため息が漏れる。
携帯を取り出し、名前も出ないその番号に一息吐く。
また流星のやつ、勝手に俺の番号教えたな、と思うと思わず眉間に皺が寄った。
あいつ、まじで勝手に教えんのやめろよな。
「…はい」
思わず低い声が自分の喉から出る。
誰か分かんないこそ、素っ気ない声が出てしまった。