Domain

「はっ?何で?」


タケルはタバコに火を点けて、目を見開いたまま俺を見る。


「消さねーと登録できねーんだよ」

「えぇっ!?翔さん、そんな入ってんすか?」

「まー…」

「つか何で俺?」

「お前しか居ない」

「うわっ、なんすか、それ。入れる相手そんな大事なんすか?」

「そう」


絶対入れとかねーと、新しい着信で消されてしまう。

だけど今、誰を消そうか迷う時間もなくて。


「俺より浮気相手っすか…」

「そうそう」

「そんな事したら休む時、俺に掛けれないっすよ」

「あー…親方に」

「あー…親方…ってか、そんじゃいつも親方に電話したらいいじゃないっすか。あんな朝の5時に…俺眠いんすよ」

「うーん…俺もな」

「まー、いいっすけど」


タバコを咥えたままグッと俺の右腕を引っ張るタケルは、ポケットから取り出したペンを握りしめて、そのペンを俺の腕に走らせる。


「お、おいっ、お前っ、」


ケラケラ笑うタケルは俺の腕に自分の番号を書きやがった。


「これで忘れないっすよ」


腹を抱えて笑うタケルから腕を振りほどき、俺は書かれた所を擦る。


「お前、これ消えねぇだろ」

「俺の愛が籠ってますから簡単には消えないっすね」

「何すんだよ、お前…」


軽く舌打ちをし、ため息を吐き出す俺にお構いなしにまだタケルは笑い続ける。
< 97 / 351 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop