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「はっ?何で?」
タケルはタバコに火を点けて、目を見開いたまま俺を見る。
「消さねーと登録できねーんだよ」
「えぇっ!?翔さん、そんな入ってんすか?」
「まー…」
「つか何で俺?」
「お前しか居ない」
「うわっ、なんすか、それ。入れる相手そんな大事なんすか?」
「そう」
絶対入れとかねーと、新しい着信で消されてしまう。
だけど今、誰を消そうか迷う時間もなくて。
「俺より浮気相手っすか…」
「そうそう」
「そんな事したら休む時、俺に掛けれないっすよ」
「あー…親方に」
「あー…親方…ってか、そんじゃいつも親方に電話したらいいじゃないっすか。あんな朝の5時に…俺眠いんすよ」
「うーん…俺もな」
「まー、いいっすけど」
タバコを咥えたままグッと俺の右腕を引っ張るタケルは、ポケットから取り出したペンを握りしめて、そのペンを俺の腕に走らせる。
「お、おいっ、お前っ、」
ケラケラ笑うタケルは俺の腕に自分の番号を書きやがった。
「これで忘れないっすよ」
腹を抱えて笑うタケルから腕を振りほどき、俺は書かれた所を擦る。
「お前、これ消えねぇだろ」
「俺の愛が籠ってますから簡単には消えないっすね」
「何すんだよ、お前…」
軽く舌打ちをし、ため息を吐き出す俺にお構いなしにまだタケルは笑い続ける。