君桜
「おはよぉさくら!」
「……咲樹。おはよ」
「ねっ、今日、さくらの誕生日だよねっ、おめでとう、はいプレゼント!」
「……っ!?
ありがと」
咲樹はたいていハイテンションだ。
そして抜群にいい記憶力で、新学期に一度自己紹介で言ったきりのさくらの誕生日を、きちんと覚えていた。
“おめでとう”
そんなことを言われたのは、いつぶりだろうか?
照れる気持ちと速まる鼓動を隠すように。
「もしかして咲樹、クラスメート全員の誕生日覚えてる?」
さくらが訊ねると、咲樹はふふっと笑って、
「全員は無理!
だけどねさくらは、初めて会った時から何だか気になって、友達になりたいって思ってて、
だから覚えてるんだよっ」
「そっか」
自分を気にしていてくれたひとがいる。
何だか嬉しくて、だけどその気持ちを隠すかのように、さくらは空を見上げた。