君桜
桜の花びらが、空に舞う。

今朝はあんなに晴れていたのに、灰色の雲が空を覆って、すぐにも雨が振り出しそうだ。

空模様を気にしつつ、さくらは帰り道を急いでいた。


雨が降るなんて思いもしなかったから、傘を持って来ていない。

だから、曇りのうちに家に着きたい。


ふいに強く風が吹いて、まだ残っていた桜の花びらがわっと舞って、さくらの考え事をもさらっていった。


……桜吹雪。

ぼんやりしたまま、さくらは足を止める。

思わず、目を凝らす。


「え……?」


無意識に。

声を、あげていた。


だって、夢と同じ。

誰かいる……。
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