君桜

「楓姉ちゃん……」


そう、忘れてはいけなかったんだ。

あのときの少女が実の姉だって、本当はずっと気づいてた。


一瞬……一瞬、顔が見えたから。


「ごめん、ごめんね」


今まで絶対、姉の話題を避けてきた。

姉はどこかで元気でいるって、そう信じたくて。


さくらは、逃げてた。


だけど、もう、誤魔化すことはおしまい。


そんな決意に気付いたのか、楓のさくらを抱く手が、ふわりと強くなった。


「姉ちゃん……?」

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