君桜
……そこで、目が覚めた。

さくらはぼんやりと、夢の残像を思っていた。


まるで、台風のときのような、激しい桜吹雪に包まれていた。

だけどふっと風が弱まったとき、その向こう側に人影が見えたの……。


絶対、誰かいた。

誰か、とても懐かしい人。

だけど、全然、思い出せない人。


「さくらー!?」

呼ばれて、さくらの意識は、ぐっと現実に引き戻された。

桜色の残像も、一気に遠ざかる。


もう少しで、思い出せたかもしれなかったのに……。

「さくら、遅刻するよ!」

怒鳴られ時計に目をやった。

時刻は7時27分。


「ヤバいっ!」

さくらはがばっと起き上がると、猛スピードで学校へ行く用意を始めた。
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