君桜
咲樹は、

「さくら、大丈夫……?」

と、そう、訊ねた。


「何が?」

「だってさくら、目がまっか……」


「え?」


咲樹に借りた鏡を覗くと、確かに瞳は赤く腫れていた。

まるで激しく泣いた後のように。


最もさくらは、そんなに泣いたことなど、数えるほどしかないけれど。


いつからだろうか、さくらはあまり、感情を表に出さなくなっていた。


“さくらって冷たいよね”


そんな陰口を言われたことも、一度や二度ではない。
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