炭酸キャンディ
少し歩き進むと
両側に屋台がぞろっと並び始めて
人も一気に増えた。
もう肩すれすれで押し進むような...そんな感じ。
小さなあたしからみれば
みんな大きくて、奥に何があるのかなんてまるで見えない。
それにドンドンと肩も腕もあたって
思わず握られた手を強く握った。
すると少し前であたしを引っ張ってくれている
駿くんがくるっと振り返り、あたしの目線までかがむように
あたしの顔を覗き込んで
「迷子になるなよ」とフッといたずらっ子ぽく笑うから
あたしの胸はドキンッと高鳴りつつも
静かに頷いて、手をぎゅっと握った。
だいぶ歩いたところで道が広くなり
駿くんとも横に並べるくらい余裕ができると
駿くんは「何食べたい?」と
あたりを見渡した。
「えっと...」
うーん何がいいかな...
...........
......あっ
「カキ氷...食べたい」
「何味がいい?」
「イチゴかな」
「わかった、その土手で待ってて」
「え...あ、うん!」
あたしも着いていくよ。
そう言おうとしたけど
すでに駿くんは列に並び始めていて
あたしは大人しく言われたとおり
近くの木の下の土手に腰をかけた。
....痛っ
思わず顔をゆがめるくらい痛みがして
かかとを見ると案の定、少し擦りむいていた。
慣れないものを履くといつもこうだもんな...はぁ。
すると「はい」と綺麗なピンク色のしろっぷが
たっぷりかかったカキ氷が目の前に差し出されて
顔をあげると駿くんがいた。
「あっありがとう!...お、お金...いくらだった?」
慌ててお財布を出そうと小さな鞄を開けようとすると
あたしのその手をさっと掴んで
「いいよ、俺が払うから」と微笑んだ駿くん。
「いやでも悪いよ...」
「俺が誘ったんだし、これくらい払わせて?」
「...うん、ありがとう」
゛俺が誘ったんだし゛
その言葉が嬉しかった。
あぁ、あたしのこと誘ってくれたんだって
1人で実感して鞄を膝の上に置いた。