炭酸キャンディ
「うまかったー!」
カキ氷を食べ終わると駿くんが
はいってカップを差し出してきて
思わず首をかしげると
あたしの手からするっとカップを奪って
駿くんのカップに重ねて
「捨ててくる」と言った。
...気が利けて...優しいな。
こんなところも好きって、
そう思った。
戻ってくると駿くんはポケットから
ケータイを取り出して時間を確認したのか
「もうすぐ花火はじまるし河川敷行こう」
と手を出してきた。
「うん!」
さっきは恥ずかしくて躊躇したけど
駿くんに触れたい。そう思ってあたしは
ためらいもなく差し出された手に自分の手を重ねた。
河川敷までは再び狭い道に入る。
また駿くんが少し前であたしをリードしてくれる。
けど...
「いたっ...」
ついに足の痛みが我慢できず、手を握ったまま
人ごみの中で立ち止まると「どうした?」と
振り返って心配そうにあたしの顔をのぞきこむ駿くん
「足...痛めちゃって。ごめんね」
せっかく楽しいのに、こんなんじゃ...
申し訳なくて俯いていると
「こっち」と人の流れに逆らうように横の茂みのほうに
あたしを連れて行ってくれた。
けどここは道からはずれていて、
あたりは真っ暗。
駿くんの顔もなんとか見える...そんな感じ。
「ちょっと見せて」
そう言ってしゃがみこむと、
あたしの足から下駄を優しくとって
低くした自分の膝に乗せてくれた
「バランスとれないから、俺の肩掴んでいいよ」
そしてそう言ってあたしの手を肩に置いてくれた。
「ありがとう...」
ケータイの明かりであたしの足を照らして
傷をみる駿くん。
...そんなにジロジロ見られたら恥ずかしい
けど、そんなことは言えずに大人しくしていると
「絆創膏持ってないんだ俺。ここからでも花火みれるし...そこ座ろう?」と
暗闇の中にぽつんとおかれたベンチを指差した。