愛してるって言って
そんなあたしの後ろから、梢が興奮気味に口を開く。



「涼夏! 今の人、紹介して!」


「今の人? 圭ちゃんのこと?」



梢の方を振り返ってそう言うと、梢は目を輝かせながら激しく首を縦に振っている。



「今日職員室で会ったイケメンが今の人なんだよー!」


「えっ!?」



さっき教室で恋する瞳を見せていたのは、圭ちゃんに対してだったってこと?



「いいけど。圭ちゃんは倍率高いよ?」


「あのギャラリーを見ればわかるよ。ていうか、涼夏の好きな人ってことはないよね?」


「ないない! ただの幼馴染みだよ」



確かに圭ちゃんはカッコイイとは思うけれど、そういう対象としては見たことがない。


だから大きく首を横に振りながら否定する。



「幼馴染み? ……そっか、そうなんだ」



梢はそう言って、ほっとした表情を見せた。



「じゃあ、あたしこっちだから」



正門を出て、あたしと反対方面へ歩き出した梢に手を振って別れた。
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