愛してるって言って
「そんなときっつーか、今でも引きずってんじゃねーの? だって、蒼太はいつも年上の女と付き合っているだろ?」


「パパ!」



ママが固まっているあたしをちらりと見ながらパパを制するようにそう言ったけれど、それはもう遅くて。


そういえば、今の彼女も蒼ちゃんより年上に見えた。



蒼ちゃんが年上の女の人が好きだったなんて……。


最初からあたしなんて、手の届く存在じゃなかったんだ。



そう思うと、胸の奥から一気に悲しみが押し寄せてきて、目の奥がじわりと熱くなってきた。


このままここにいたら絶対に泣いてしまう自信があったから、ぱっと立ち上がってくるりと方向転換し、リビングを出ようとした。



「涼夏!」



ママの声が聴こえたけれど、あたしは何も言わず、振り返ることなく足早にリビングを出て自分の部屋に入った。


それと同時にぽろぽろと涙が溢れてきた。
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