愛してるって言って
そのとき、コツコツと足音が響いてきた。


もしかして、来た!?


少し先の角の向こうから聴こえてくるその音に全神経が注がれる。


そして、人影が現れて――



「蒼(ソウ)ちゃん!」



それはあたしの想い人、佐伯蒼太(ソウタ)だった。


慌てて立ち上がって、蒼ちゃんに向かって一目散に走る。



「すず!?」



その声はかなり驚いたもので。


目を見開いている蒼ちゃんも凄くカッコイイ。


そして、蒼ちゃんに辿り着いたあたしはその勢いで抱きついた。



「蒼ちゃん、おかえり」


「ただいま……って、何でいるんだよ? 来るときは連絡しろって言ってんだろ?」


「だって、驚かせたかったんだもん」


「もし俺が帰ってこなかったらどうするつもりだよ」


「帰ってこないときもあるの?」


「たまにな」



そう言った蒼ちゃんは、抱きついているあたしをそっと離してから、部屋の方へと足を進めた。
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