愛してるって言って
「圭ちゃん……」


「ん?」


「ありがとね」


「……」



圭ちゃんは無言のままあたしに視線を向ける。


その表情は眉を寄せていて凄く不機嫌そうで。


圭ちゃんは溜め息混じりに口を開いた。



「何に、ありがとう?」


「……」



ずっと想っていてくれてありがとう、と言ったつもりだった。


けれどあたしが蒼ちゃんにそう言われて嬉しいか、って考えたら、ただ相手のことを傷つけるだけの言葉のような気がして何も言えなくなった。


そしてそんなあたしの心の内を読んだかのような言葉が飛んできた。



「もう、『ありがとう』とか『ごめん』はいらねーから。ちゃんと俺のことを見てくれよ」



一度そらした視線をまたちらりと圭ちゃんに向ける。


そしたら真っ直ぐに見つめてくる真剣な瞳があって。


その瞳に吸い込まれるようにじっと見ていると、圭ちゃんの左手がゆっくりとあたしの右頬を覆う。


それと同時に、どきんどきんと鼓動が激しく鳴り始めた。
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