愛してるって言って
きょろきょろと周りを見回しながら、ゆっくりと足を進める。



「なんだよ?」



そんなあたしを見て、蒼ちゃんは眉間に皺を寄せる。



「ううん、何でもない」



そう言って入った部屋のソファーに腰かけたけれど、『何でもない』ことはない。


どこかに女の影がないか、と無意識に視線で物色してしまったんだ。



少ししてから部屋に入ってきた蒼ちゃんは、目の前のローテーブルにお茶の入ったグラスを置いた。


そのままワイシャツとネクタイの間に指を突っ込み、手を左右に振ってネクタイを緩めながら隣に座ったけれど、


あー、カッコイイ!


ネクタイを緩める姿って、なんでこんなにカッコイイんだろう。


でもふと気付いたこと。


あたしの隣に座っている蒼ちゃんは、なぜか一人分のスペースを空けていて。


って、何、この空間は!


何で空けて座っているの?
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