愛してるって言って
そんな蒼ちゃんの行動が不満で、その空間を一気に詰めて腕を組む。



「すず?」



蒼ちゃんは首を傾げながら、あたしの顔を覗き込んできた。



どきんっ――



や、やばいっ。


近すぎるって!


女なら誰もが魅了してしまうほどの整った顔がこんなに至近距離にあると、心臓が止まりそうになる。


それでも視線をそらしたくなくて、じっと食い入るように蒼ちゃんの瞳を見ていたら、蒼ちゃんからそらされた。


もしかして、意識した?


ようやくあたしのことを女として見てくれるようになったのか、しめしめと思いながら、頬を緩ませたけれど、



「で、何しに来た?」


「えっ」



全く意識していないことを表すような抑揚のない声で、そう訊かれた。


なんだかショックだったんだけれど、その言葉で、そういえば今日来た目的をまだ話していなかったんだ、ということに気付かされた。
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