愛してるって言って
「そういや……」



そんなあたしをよそに、蒼ちゃんは思い出したように口を開く。



「圭介とは会った?」



圭ちゃん?



「うん、帰り際に会った」


「それなら、一緒に来ればよかったのに」



蒼ちゃんはそう言うけれど、そんなことは絶対にしない。


だって、圭ちゃんは蒼ちゃんの弟で。



あたしは物心がついた頃から蒼ちゃんのことが好きだった。


いつも『そうちゃーん』と言いながら、金魚の糞のように蒼ちゃんのあとを追っかけ回していた。


そんなあたしを見て、圭ちゃんはいつも『相手にされるわけがないだろ』と馬鹿にしていたんだ。


確かに年は八つも離れているし、蒼ちゃんからはいつも妹扱いされていたけれど。


だから、圭ちゃんとここへ来たりなんかしたら、また何を言われるかわからない。
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