愛してるって言って
圭ちゃんはぎゅっと手を握り直してから、またゆっくりと歩き始めた。



「近いなー」


「え」


「俺んちから涼夏んちまで近すぎだろ。すぐ着いちまう」



歩いて五分くらいの距離だから、確かに近い。



「遠回りする道すらねーし」



ほぼ一本道だから回り道できない。


でも圭ちゃんはそう言うけれど、



「近い方がすぐに会えるからいいじゃん」



あたしは会いたいときにすぐに会える距離だから凄く嬉しい。


寧ろこの五分が遠く感じるくらいだもん。



「……まあ、そうなんだけどさ」



そう言った圭ちゃんはちょっぴり唇を尖らせていて。



「けど、今はもっと一緒にいたいからさ」


「……」


「今だけ、遠くしてほしい」
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