愛してるって言って
圭ちゃんとの時間を想像して口許が緩んでいたと思うけれど、『にやけてる』と言われると、変な想像をしていると思われているように感じるのはあたしだけ?


楽しい時間を思い浮かべただけなのになぁ。


なんて思いながら圭ちゃんと触れ合っている手をじっと見る。


ずっとずっとこの手が離れなければいいのに。



「あ」



不意に圭ちゃんが小さく呟いた。



「どうしたの?」


「あそこ見て」


「あ」



さっきまでは清々しいほどのブルーしかなかったのに、白どころかグレーな雲が空に浮かび始めて。



ゴロゴロゴロゴロ……



雷まで鳴り始めた。



「雨降るのかな?」


「降りそうだよな」



お互いに顔を見合わせて似たようなことを口にする。
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