愛してるって言って
「圭ちゃん?」


「ん?」


「どうしたの?」


「何が?」


「何がって……圭ちゃん、なんかおかしいよ」


「……」



そのまま黙ってしまった圭ちゃんに何かあったんじゃないかと、目の前の胸をそっと押して離れる。


そして顔を覗き込むように見上げると、視線をふいっとそらされてしまった。


その行動の意味がわからず、むっと唇を尖らせる。



「ちゃんと言ってくれなきゃわからないよ」


「……」



ぼそぼそと呟くように言ったあたしの言葉に、圭ちゃんは無言のまま視線を合わせてきた。


その表情はどこか困ったような顔をしていて。



「圭ちゃん?」


「……困るんだよ」


「え」


「目の、やり場に困るっつうの」
< 223 / 376 >

この作品をシェア

pagetop