愛してるって言って
ほっと息をついてカップをローテーブルに戻すと、蒼ちゃんはあたしの方へ視線をちらりと向けながら話しかけてきた。



「仲良くやってんだな」


「え」


「圭介とだよ」


「あ……うん」



突然圭ちゃんとのことを訊かれて吃驚した。


けれど、やさしく微笑んでいる蒼ちゃんの表情を目の当たりにすると、蒼ちゃんにとっては嬉しいことなんだなと胸が痛む。



「蒼ちゃんは?」


「ん?」


「蒼ちゃんも、彼女と仲良くしているの?」


「は? 俺、彼女なんかいないよ」


「え」



蒼ちゃんの口から出てきた言葉に、一瞬思考が停止する。


今蒼ちゃんは『彼女なんかいない』って言わなかった?


いやいやいやいや、そんなはずはない。


あたしはこの目でちゃんと見ているんだから。
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