愛してるって言って
「吃驚した」


「何度も呼んでんのに返事しないからだろ?」


「え」



呼んでた?
全然気づかなかった。


それほど今のあたしの頭の中はぐちゃぐちゃになっているってことなんだ。



「何か悩みごとか?」


「え」


「ずっと考え込んでるから」



確かに考え込んでいる。


けれど、それが蒼ちゃんのことだなんて言えるわけない。



「ううん、何もないよ」



平静を装って言ったあたしに「ふーん」とどこか納得していない声が耳に届いてくる。


けれど、言えないよ。



「そういえば、すず」


「え、何?」


「誕生日おめでとう」


「あ、うん。ありがとう」


「すずもやっと16歳か」
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