愛してるって言って




「お邪魔します」



玄関でサンダルを脱いで家に入ると、パタパタパタパタとスリッパの音が響いてきて、



「涼夏、いらっしゃい。お誕生日おめでとう!」



満面の笑みを浮かべながら絢華ママがやって来た。



「ありがとう」


「涼夏が16歳なんて、ほんとに早いわね。ついこの間までこんなにちっちゃかったのにね」



そう言って自分の腰辺りで掌を下に向けて、ついこの間までのあたしの背丈を示している。


ついこの間っていつの話だ? なんて聞きたくなるほど何年も前のことだろうけれど、大人はなぜかそう言って懐かしがる。



「俺ら、部屋に行くから」



まだまだ話そうとしている絢華ママを遮るように圭ちゃんはそう言ってあたしの手を掴み、そのまま足を進めて階段を上がっていった。
< 244 / 376 >

この作品をシェア

pagetop