愛してるって言って
苦しくてもう息が続かないと思い始めた頃、圭ちゃんはゆっくりと離れていく。


はあはあと息をするのも必死になっているあたしとは対照的に、圭ちゃんは余裕の笑みを浮かべていて。


けれど次の瞬間、ふっと笑みを消して真剣な眼差しを向けてきた。



「涼夏」



静かに発された声にどきんっと心臓が跳ねる。


ゆっくりと顔を近づけてきた圭ちゃんは、唇にちゅっと触れるだけのキスを落としたあと、また呟くような静かな声を出した。



「そろそろ、涼夏が欲しい」


「!」



恋愛にたいしてはまだまだ免疫のないあたしだけれど、その言葉の意味がわからないほど子供ではない。


けれどここでそれに頷いてしまえるほど大人でもない。
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