愛してるって言って
今度は翌日学校のない金曜日に来てやる! と心に決めて、今日は大人しく帰ることにした。


蒼ちゃんの車の助手席に座り、また車の中を視線で物色する。


そういえば、蒼ちゃんから漂ってきた香水の匂いは、この車からは感じられない。


もう消えてしまったのかな。


それとも、ほんとにぶつかった拍子についたものなのか。


それを訊けたらいいのに、その答えが怖くて訊くことができない。


運転する蒼ちゃんの横顔を見つめながら、『彼女がいませんように』と祈ってみた。


そしたら、



「なに?」



蒼ちゃんは運転しながらだから、ちらっとだけこっちに視線を移して、そう言ってきた。


『彼女いるの?』って訊きたい。


でも、その答えを聞きたくない。


そんなことを考えていると、ちょうど信号に引っ掛かって車が停車した。
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