愛してるって言って
真っ直ぐ前を見据えて運転している蒼ちゃんを見ながら、今言った言葉の意味を考えた。


困った顔をしながら、ママが何て言っていたのかを訊いてきた。


でも、特には何も言ってなかったこと、蒼ちゃんなら安心っていつも言っていることを伝えると、蒼ちゃんはほっとした顔を見せた。


もしかして、ママのご機嫌を窺っているの?


でも、何のために?


蒼ちゃんはいつもあたしが訊いたことしか答えてくれないし、必要以上のことは何も言わないから、何を考えているのかわからない。


――蒼ちゃんの素というものを見てみたい。


なんて考えていたら、



「ほら、着いたぞ」



いつの間にかうちに着いていた。


なんで蒼ちゃんといると、時間が経つのがこんなに早いんだろう。


大人しく車から降りて、開けられた助手席の窓から中を覗き込む。



「蒼ちゃん、ありがとう」


「ん、またな」



そう言った蒼ちゃんはそのまま車を発進させた。
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