愛してるって言って
親父……俺のほんとの父親のこと。



俺がまだ一才のときに亡くなったから、記憶には何も残っていない。


母さんが見せてくれた写真やビデオの中の親父しか知らない。


その中では俺や母さん、そして当時母さんのお腹の中にいた優華にたくさんの愛情を注いでいる親父の姿が映し出されている。


記憶にはないけれど、これを見ればどれだけ俺たちのことを愛してくれていたかわかる。


それに、母さんがどれだけ親父のことを愛していたのか、今でもどれだけ大切に想っているのかわかっているつもりだ。



俺が物心ついた頃から、母さんはいつも親父の遺影の前で泣いていた。


そして親父の前ではよく笑っていた。


いつも親父のことを聞かされていたのを覚えている。


きっと母さんは、俺や優華にも親父のことをちゃんと知って、大切に思っていてほしいと思っていたんだと思う。
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