愛してるって言って
話があると言ったくせに、俺がなかなか口を開かないからか、父さんはそう思ったらしい。



「なんでも言ってみろ」



頬を緩ませてやさしい表情を向けながらそう言われて、俺の中で決断したことを話そうと口を開いた。



「いつか俺が結婚するとき、名前を変えたいんだ」


「え」



俺が何を言いたいのか読み取れずに狼狽えている母さんの隣で、父さんは無言のまま俺の瞳を真っ直ぐに見つめてくる。



「このままいくと、親父が独りになる」


「……」



いまだに何のことかわからず瞳をさ迷わせている母さんを視界に入れながら、俺の言葉を理解したであろう父さんがふっと笑みをこぼした。
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