愛してるって言って
いまだに俺の手を握りしめながら、俯いて涙をぽろぽろと流している母さんも、きっと心のどこかでは気になっていたことで。


母さんにも、親孝行できているかな?


目の前にある母さんの頭をじっと見ながら心の中でそう思う。


答えはないけれど、きっと母さんも心の中で頷いてくれているはずだ。


そんなことを思っている間に父さんが母さんの傍に来ていて。


そっと母さんの肩に手を触れると、母さんはそのまま父さんの胸に顔を埋める。


そんな母さんを宥めるようにゆっくりと背中を撫でながら、俺に視線を向けてきた。



「蒼太、いずれ名字を換えても俺の息子だからな。いつでもここに帰ってくればいいんだぞ」



ほらな、父さんはこういう人だ。
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