愛してるって言って
視界の隅に入ってきた時計の針を見て、大きな声と共に椅子の音も鳴らしながら慌てて立ち上がる。



「もう帰らなきゃ!」



HRが終わってからずっと梢と話し込んでいたら、いつの間にか時計の針は5時半近くを指していた。



「なにか用事があるの?」


「うん、このあと寄らなきゃならないところがあるんだ」



と言いながら、思わず顔がにやけてしまう。


そんな表情を隠すために、そのまま教室を出ようと回れ右をして歩き始めた。



「涼夏はバス? 電車?」


「今日は歩き」


「はあ?」



あたしが住んでいる町は電車やバスを使わないと通えない場所にあると知っているからか、その答えに梢は眉を潜める。



「寄りたい場所が、この近くなの」


「あ、そうなんだ」
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