愛してるって言って
「あんなところでキャーキャー騒いでいたら練習に集中できるわけないじゃん。ほんとに相手のことを想っているならもっと静かに見るべきだよね」


「……」



梢の視線の先にあったのは圭ちゃんのファンと思われる女の子のかたまりで。


確かにあの「キャー」という甲高い声は集中力が途切れてしまうかもしれない。



「もしかしたらあそこにいた方が覚えてもらえるかもしれない。でもあたしは、あの中の1人にはなりたくない」



この言葉で、梢が圭ちゃんのことを本気で好きなんだと伝わってきた。



梢には圭ちゃんを紹介すると言いながらなかなかそんな機会がなくて、2週間経った今でもまだ実現していない。


だけどこんな風に圭ちゃんのことを想っている梢のことを、圭ちゃんに気づいてもらいたいなと思った。



「あ、もう5時半を過ぎてる。そろそろ帰ろうか」



時計を見ながらそう言った梢に、



「そうだね」



と言って、席を立った。
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