俺は、お前がいいんだよ。
Chapter*1
素直じゃない私
「最悪…。」
桜も散ってしまった、4月下旬の放課後。
校舎の渡り廊下に設置されている二台の自動販売機の前にしゃがんだ私は、小さく溜め息を零す。
「ったく、なんなのよ…さっきの男子たち。」
ポツリと呟きながら、辺りに散らばった小銭を拾い始めた。
遡ること、ほんの数分前。
4月下旬のわりに暑かった今日、喉が乾いていた私は、何か飲み物を買おうと自動販売機のところに来たわけだけど…
財布から小銭を出そうとしていたタイミングで、後ろから…ふざけながら走って来た男子たち数人組の一人にぶつかられ、財布を落としてしまったのだ。
そのせいで、小銭が散らばる始末。
原因を作った男子は、軽いトーンで“ごめんね~”と謝って他の男子たちと逃走。
悪気なんて、これっぽっちもなさそうだった。
「ついてないな…。」
ひとつひとつ小銭を拾っていた時、私はピタリと手を止めた。
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