俺は、お前がいいんだよ。
「少し怒ったような声で、俺を気遣うこと言うんだもんな。そのギャップが、すげぇ可愛い。」
「どっ、どこが!?変な冗談やめてよね!」
「冗談じゃねぇよ。俺、伊織のそういうところ、好き。」
ドクンッと大きく脈打つ鼓動。
まともに瀬ノ内君を見れず、視線を泳がせた。
「本当は家まで送りたいけど、伊織の優しい気持ちに甘えるよ。」
「うん…」
危なかった…。
とりあえず、蒼井坂駅から家までは一人になれる…。
そうしたら、落ち着くかな…。
普段より速くて音も大きい鼓動や、顔や耳に広がっている熱。
いつも通りの私に戻るかな…。
少し不安を抱きながら、私は瀬ノ内君と一緒に駅へ。
電車に揺られ、蒼井坂駅で私だけ下車した。
別れ際の瀬ノ内君の優しい笑顔に、また跳ね上がった心臓。
顔も茹でダコのように赤くなってるに違いない。
こんな姿を見られるのは恥ずかしくて、たくさんの人で賑わう駅構内や駅前の交差点を、逃げるように全速力で駆け抜ける。
家に着くと、慌ただしく自分の部屋へと入った。