俺は、お前がいいんだよ。

周りからキャーッと沸き上がる悲鳴。


注がれる視線にソワソワする私とは対照的に、男の子は落ち着いている。


女の子たちの悲鳴も視線も、特に気にしていないみたいだ。


「昨日の子、だよな?」


気付かれてたんだ…。


誤魔化しても仕方がないので、小さく頷いた。


「何?陽希、この子と知り合いなの…?」


隣にいた茶髪の男の子が興味深そうに私の顔を覗き込む。


そんなにジロジロ見ないでよ。


肩をすくめると、昨日の男の子は空いている方の手を茶髪の男の子の肩にのせた。


「なあ、誠(マコト)。俺、ちょっとこの子と話したいから、先に教室に戻ってくれる?」


「えっ!?あ、ああ…分かった。」


その言葉に、なぜか…とても驚いている茶髪の男の子。


もう一度、私を凝視した後…スタスタと廊下を歩いて行く。


そして、5組の教室の中へと入って行ってしまった。



< 12 / 350 >

この作品をシェア

pagetop