俺は、お前がいいんだよ。
周りからキャーッと沸き上がる悲鳴。
注がれる視線にソワソワする私とは対照的に、男の子は落ち着いている。
女の子たちの悲鳴も視線も、特に気にしていないみたいだ。
「昨日の子、だよな?」
気付かれてたんだ…。
誤魔化しても仕方がないので、小さく頷いた。
「何?陽希、この子と知り合いなの…?」
隣にいた茶髪の男の子が興味深そうに私の顔を覗き込む。
そんなにジロジロ見ないでよ。
肩をすくめると、昨日の男の子は空いている方の手を茶髪の男の子の肩にのせた。
「なあ、誠(マコト)。俺、ちょっとこの子と話したいから、先に教室に戻ってくれる?」
「えっ!?あ、ああ…分かった。」
その言葉に、なぜか…とても驚いている茶髪の男の子。
もう一度、私を凝視した後…スタスタと廊下を歩いて行く。
そして、5組の教室の中へと入って行ってしまった。