俺は、お前がいいんだよ。

「由依、もしかして雷…ダメ?」


「…………。」


無言でコクンと頷く。


この状況で“違う”だなんて嘘をつく余裕は無い。


恥ずかしいけれど、素直に認めるしかなかった。


「そうだったんだ…。俺…もっと早く図書室に来れば良かったな。そうすれば、由依も少しは怖さが紛れたかもしれねぇのに…。」


えっ…。


笑ったり、からかったりしないの…?


そんな風に言われると思ってなかっただけに、驚いてしまった。


「ごめんな、一人にして。」


「そ、そんなの…謝ることじゃないでしょ。あ、陽希の腕…掴んだままだった。すぐに離すね…。」


慌てて離れようとした時、陽希は私の背中に手を回す。


そして、包み込むように優しく抱きしめた。



< 134 / 350 >

この作品をシェア

pagetop