俺は、お前がいいんだよ。
自覚した初恋
「雨、意外と早く小降りになったな。雷も鳴らなくなったし。」
「うん、そうだね…。」
雷が収まり、雨の勢いも弱くなってきた頃合いを見計らって図書室を出た私たち。
職員室に寄って図書室の鍵を返却した後、昇降口へとやって来た。
バッグから出した折りたたみ傘をさして外に出る。
灰色の空を見上げると、傘を持つ手に温かいものが触れた。
「………?」
ビックリして視線を落とすと、目に映ったのは陽希の手。
「由依、俺も入れて?」
その言葉と共に、陽希が傘の中に入ってきた。
「ちょっと、陽希!自分の傘は…!?」
「持って来てない。」
無理もないか…。
今朝は、雨なんて降りそうにないぐらいの晴れっぷりだったし…。
「そ、それなら仕方ないね…。今日は特別…ってことで。」
「ありがと、由依。傘…俺が持つよ。」
「う、うん…。」
傘から手を離すと、私たちは小雨の降る中を歩き始めた。