俺は、お前がいいんだよ。
「あ、伊織ちゃん…ニヤケていて可愛い。そういう表情もするんだね。」
「べべ、別にニヤケたりしてないし!柏木君の目の錯覚じゃない?」
素直に認めるのは恥ずかしくて誤魔化そうとしたけど、声が上擦る。
動揺してるのバレバレだ…。
「さすがに今のは錯覚じゃないよ。伊織ちゃん、相変わらずの面白い子だね。」
「ど、どこが!?どう考えても、面白い要素ゼロでしょ!」
「ハハッ、そういうと思った!」
勝手に発言を見透かさないでよ…。
声を出して笑う柏木君に口を尖らせた。
「やっぱり、伊織ちゃんと居ると飽きないな。結構楽しい。」
「冗談やめてよ…!」
「いや、冗談じゃないから。俺、女の子の前でこんな風に思いっきり笑ったことないよ。伊織ちゃんが初めてかも。」
本当かどうか疑わしいな…。
柏木君は、陽希と違って女の子たちに対して愛想が良いイメージだし。
いつも…そういう無邪気な笑顔を、女の子たちに振りまいてそうな気がする…。
楽しそうな表情で、ビニール袋から購買のパンを取り出す柏木君を少し冷ややかに見つめた。