俺は、お前がいいんだよ。
「優しいね、伊織ちゃんは。」
「や、優しいっていうより、鬱陶しいお節介だったでしょ。」
「そんなことないよ。伊織ちゃんのアドバイス、これから活用する。本当、ありがとう。」
いやいや、お礼言われるようなことじゃないのに…。
照れくさい気持ちで、お弁当を片付けていると、傍に置いていたスマホのバイブが震え始めた。
「あっ、陽希だ…。」
画面に表示されている陽希の名前を見て、自然と心が弾む。
スマホを手に持とうとした時、突然…柏木君が私の手首を掴んだ。
「えっ…?」
驚いて目を見開くと、柏木君は慌てて手を離す。
「あ、いや……今のは反射的に手が動いただけっていうか…無意識というか、そんな感じだから。いきなり、ごめんね…。」
「う、うん…。」
気まずそうに頭を掻く柏木君。
今まで見たことがないような表情に戸惑いながら、陽希からの電話に出た。