俺は、お前がいいんだよ。
「大丈夫?」
「う、うん…!!あ、あのっ…ごめんね!」
ビックリして、慌てて柏木君から離れる。
私ってば、柏木君に思いっきり迷惑かけてるじゃないか…。
申し訳なくて、何度も頭を下げた。
「伊織ちゃんが悪いわけじゃないでしょ?あのさ、やっぱり俺に掴まってなよ。そろそろ疲れてきたんじゃない?」
「ううん、全然大丈夫だから気にしないで?」
力強く答えると、柏木君はクスッと笑った。
「分かった。それなら、伊織ちゃん…立ってる場所…俺と替わってくれる?」
「……うん。」
よく意味が分からないまま、柏木君と場所を入れ替える。
つり革をギュッと握る私の耳元に柏木君は顔を近付けた。
「そこなら、もう…伊織ちゃんに荷物がぶつかることは無いから。」
あ……。
そっか、それで…わざわざ私と場所を替わってくれたんだ。
「い、いちいち気遣ってくれなくてもいいのに…。荷物ぐらい、ぶつかったって平気だし。」
そうじゃないでしょうが…!
今の言葉、本当…有り得ない。