俺は、お前がいいんだよ。

柏木君、戸惑ってる…。


「な、なんか…私が言うと違和感あるよね。驚かせちゃって、ごめん…。」


「いや、そういう意味じゃないんだ…。まあ、俺の言葉は…独り言だと思って受け流してくれればいいから。」


「う、うん…。」


私にしては珍しく、思ったことをポロッと口にしてしまった…。


柏木君、口には出さないけど…“いきなり、何言ってんだ…この人”みたいに思ってる気がする。


気まずい空気にしちゃったな…。


その後、特に会話をすることのないまま電車に揺られ、私たちは月沢駅へとやって来た。


ここが月沢駅か…。


陽希、いつもここから通って来るんだ。


駅前のロータリーの真ん中、たくさんの花が植えられているし、周りも整然としていて、綺麗な駅だなぁ…。


キョロキョロと辺りを見回す。


「伊織ちゃん、月沢に来るの…初めて?」


「あっ、うん…。電車で通過したことはあるけど、ここで降りるのは初めてなんだ。」


「へぇ、そうなんだ…!じゃあ、陽希の家に行こっか!」


柏木君は柔らかく笑うと、スタスタと歩き始めた。


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