俺は、お前がいいんだよ。

「……もっと早く、伊織ちゃんと出会いたかったな。」


「えっ…」


「でも、今…こんなこと言っても仕方ないよね。俺の入る隙なんて1ミリもないんだし。」


「柏木君…?」


今の、どういうことだろう…。


頭の中で疑問符を浮かべながら固まっていると、柏木君は焦った顔でベンチから立ち上がった。


「あ、いや…今のは俺の独り言みたいなのだから気にしないで?」


「う、うん……。」


不思議に思いつつも、ぎこちなく頷く。


ベンチに置いていた買い物袋を持って立ち上がると、柏木君は思いっきり背伸びをした。


「あーあ、陽希に先越されちまったな。しかも、こんなに可愛くて優しい彼女…なかなか見つけられないっての。」


「ちょ、ちょっと何言って……」


「本当、そう思うよ。伊織ちゃんに愛されてる陽希は幸せ者だよ。」


「…………。」


そんな風に言われると、なんだか…嬉しい。


嬉しいけど……


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