俺は、お前がいいんだよ。
「陽希、待って!おっ、落ち着いて…!」
「由依…?」
「柏木君は、陽希の家までの道案内をしてくれてたの。」
「えっ…」
瞬きをしながら私を見る陽希。
柏木君の胸ぐらを掴んでいた手を静かに離した。
「私、陽希の家に行こうと思って、柏木君に場所を教えて貰おうとしたんだけど、一人で行くのは分かりにくいだろうから…って、一緒についてきてくれたんだ。」
「そ、そうなのか…?」
コクコク頷くと、陽希はぎこちなく柏木君に視線を向ける。
ついさっきまでの硬い表情は、少し和らいでいた。
「誠、感情的になって悪かった。っていうかさ、そういうことなら“色々”なんて言わずに、最初から事情を説明しろよ。紛らわしいじゃねぇか。」
「でも、さっきの状況だと…俺が詳しく話したところで、陽希は信じないだろ?」
「……まあ、確かに。」
ポツリと呟いた陽希は苦笑すると、私の手を握った。