俺は、お前がいいんだよ。
「んじゃ、あとは俺が家まで由依を連れてくから。」
「ああ、分かってるよ。」
溜め息を零した柏木君は、スタスタと歩き出す。
でも、少し進んだところでクルリと私たちの方に振り向いた。
「伊織ちゃん、健闘を祈ってる…!」
「うん、がっ…頑張るよ。」
思わず声に力が入る。
そんな私を見て、柏木君は優しく目を細めて笑った後、公園から出て行った。
最後の最後に、また背中押してもらって、勇気づけられちゃった…。
温かい気持ちに包まれていると、陽希が不満げな表情で私の顔を覗き込んできた。
「今の“健闘を祈る”って、なんのこと?」
「あ、えっと……料理!料理のこと!!」
ここで“陽希への告白”って、ストレートに言えればいいんだろうけど……
その答えを口に出すことは出来なかった。
や、やっぱり緊張する…。
こんなに、言葉にするのが難しいと感じた気持ちは初めてだよ…。