俺は、お前がいいんだよ。
傘とハンカチ
放課後。
帰り支度を済ませた私は、重い足取りで廊下を歩く。
ついに、説教の時間到来か。
鬼のような形相で怒るんだろうな、瀬ノ内君。
どんな文句を言われても謙虚に受け止めなくては。
そう心に誓いながら屋上にやってくると、既に瀬ノ内君が待っていた。
「は、早い…ですね。」
「授業が終わって、すぐに来たから…。」
お昼休みの時みたいに、穏やかな表情…。
でも、この後…急に表情を変えるんだろう。
その前に、私から謝罪とお礼を言うべきだよね…。
私は、大きく息を吸い込んだ。
「き、昨日は…すみませんでした…。」
「えっ…」
「私が落とした500円玉、わざわざ拾ってくれたのに、あんな言い方した挙げ句、逃げるように帰ってしまったから…。あ、あの……助けていただき、ありがとうございました…。」
ぎこちない声で言葉を繋げた私は、深々と頭を下げた。