俺は、お前がいいんだよ。

「由依、やっぱり…なんかあっただろ?」


「えっ…」


お昼休み。


そよ風が気持ちいい屋上でお昼を食べ始めた途端、陽希が口にした言葉。


私は、パチパチと瞬きを繰り返した。


「何も、ないよ…。」


「朝の電車の中でもそう言ってたけど、ずっと浮かない顔してる…。何もないとは思えねぇよ。」


陽希の前では、いつも通りの自分でいることを意識してたつもりだったのにな…。


「無理に…とは言わないけど、俺で良ければ話聞くよ?話すことでスッキリするかもしれないし…。」
 

優しさ溢れる笑顔に胸がいっぱいになる。


少し迷ったけれど、私は口を開いた。


「実は、今朝…ちょっと嫌な夢を見ちゃって。だから目覚めが良くなかったし、モヤモヤして気分も優れないというか…。」


「嫌な夢…?」


「うん、中学の頃の夢。男の子たちが教室の隅でコソコソと私の話をしてるんだ…。“ムカつく”とか“お前、何様だよ”とか色々と言われてたな…。」


その夢に陽希が出てきたことは言いにくくて、言葉にするのは避けてしまった。


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