俺は、お前がいいんだよ。

“今さら、謝ってんじゃねぇよ”なんて怒鳴り声から説教が始まるのかもしれない。 


身構えていると…


「俺…大したことしてねぇから、そんな畏まったりすんなよ…。でも、伊織にお礼言ってもらえて嬉しい。ありがとな。」


「…………。」


へ…?


あ、あれ??


耳に届いた声は予想していた言葉とは全くかけ離れたもので、私は瞬きを繰り返しながら頭を上げた。


「あの、昨日のこと…怒ってないんですか…?」


「別に怒ってねぇけど、怒ってるように見えたか?」


「い、いえ…。」


小さく首を横に振る。


怒ってるようには見えなかったから、心の奥で沸々と怒りを煮えたぎらせてるんだろうと思ってたんですが……。


「は、話って…昨日のことじゃないんですか?」


「ああ、違うよ。」


即答の返事。


そうなると、皆目見当がつかない…。


私の頭の中は、無数の疑問符に埋め尽くされた。


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