俺は、お前がいいんだよ。
そっか…。
ほぼ初対面に近い陽希のことを、親しそうな感じでサラリと名前で呼んでたこと…。
それが、さっきから感じてた違和感の正体だったんだ…。
あの時、栗山さんは陽希と会話をしてたわけじゃないのに、どうして名前を知ってるんだろう?
頭の中で疑問符を浮かべていると、栗山さんは気まずそうに口を開いた。
「ご、ごめんなさい…。遊園地で会った時、伊織さんが…そう呼んでたから。私、陽希君の名字、知らないし…。」
あ……。
そう言えば、私…陽希が来てくれた時に一度だけ名前を口にしたんだっけ…。
栗山さん、よく覚えてたな…。
「そういう言い訳もウザい。俺を名前で呼んでいい女は由依だけなんだよ。」
「…………。」
俯く栗山さんに溜め息をついた陽希は、スタスタと歩き出す。
だんだん小さくなっていく栗山さんの姿。
チラチラと振り返って見ていると、陽希は私の頬にキスを落とした。