俺は、お前がいいんだよ。

突然の思わぬ言葉に、目を見開く。


「け、決心も何も別れるなんて言ってないよ…。」


「うそっ、信じられない…。どう見たって、伊織さんじゃ瀬ノ内君に釣り合わないんだから、別れるのが普通でしょ?私の彼氏になる方が、瀬ノ内君にとってメリットがたくさんあるんだし。」


大げさに驚く栗山さんに、少し眉をしかめた。


「そんな考え方、勝手に展開しないでよ…。っていうか、栗山さん…本当に陽希が好きなの?さっきの男の子と、すごく仲良さそうに見えたけど…」


「ああ、慶太のこと?彼は単なる友達の一人よ。伊織さんったら、変な勘違いしないでよね。私、今は瀬ノ内君一筋なんだから!」


「だ、だけど…腕絡めて楽しそうに話してたし……」


単なる友達には見えなかった。


反論する私に、栗山さんの表情は硬くなっていく。

そして、不機嫌そうに溜め息を零した。


「……ムカつく女。」


「えっ…」


「自分の立場をわきまえないような鈍感な女が傍にいるなんて、瀬ノ内君が可哀想としか言いようがないわ…。」


冷たい瞳。


睨まれた私は肩をすくめた。


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