俺は、お前がいいんだよ。
「あ!この前、駅前で会った子!」
恵理子や同じ班の女の子たちと料理をしていた時、声を掛けられて顔を上げる。
誰かと思えば、先日…駅前で栗山さんと仲良さそうに歩いていた男の子だ。
「ど、どうも……。」
この人も同じキャンプ場だったのか…。
ぎこちなくお辞儀をする。
「ちょっと、由依。この男の子…誰?」
「あ、えっと……陽希の友達。中学時代の。」
恵理子に耳打ちで訊ねられた私は、咄嗟にそう答えた。
栗山さんの友達…とは、さすがに言えない。
恵理子のことだから、栗山さんの名前を口にしただけで凄く心配しそうだし…。
「そう言えば、会ったついでに…ちょっと君に聞きたいことあるんだけど、少し時間貰っていい?」
「は、はい…。それじゃあ、向こうの方で話しませんか?」
「あ、うん…。分かった。」
恵理子に話を聞かれないようにと、私たちは班のテントの傍から離れた。
この人が私に聞きたいこと…だなんて、栗山さんに関するものとしか思えない…。