俺は、お前がいいんだよ。

「おーい、陽希っ!!昨日、お前が声を掛けてた女の子が呼んでるよ。」


瀬ノ内君の方にスタスタと歩きながら、大きな声を発する柏木君。


そのせいで、5組の教室が一気にどよめく。


クラスの生徒たちの視線が私に向けられた。


ちょ、ちょっと!!


なんで、わざわざ大声で呼んでるの!?


傍に行って、こっそり耳打ちでもして呼んでくれればいいものを…。


柏木君に頼むんじゃなかった…と後悔している間に、瀬ノ内君が優しい笑顔で私のところに駆け寄ってきた。


「わざわざ来てくれたんだ…。俺、これから伊織の教室に行こうと思ってたんだけどさ。」


「さっさと返事をしたかったので…」


周りの視線を煩わしく感じながら、私は言葉を続けた。


「お礼は…要らないです。それほどのことをしたわけじゃないですから。」


瀬ノ内君の表情が少し曇る。


「いや、俺からすれば…すげぇ助かったんだ。“ありがとう”の言葉だけじゃ足りないぐらい…。だから…」


「とにかく、お礼は結構です…。」


キッパリと告げて帰ろうとした時、瀬ノ内君は私の腕を掴んだ。





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